ダイエットに効く漢方 62.防風通聖散

ツムラ、クラシエなどから顆粒、錠剤の漢方薬としても出ている62番、防風通聖散(ボウフウツウショウサン)という名前の漢方薬です。この漢方薬の出典は1172年に書かれた「宣明論(センメイロン)」(劉河間・著)で、漢方薬の中では比較的新しい部類の処方です。

防風通聖散の成分

漢方は自然の草木や鉱物などの成分である「生薬」を組み合わせて出来ています。防風通聖散は下記の18種類の構成生薬から作られています。

黄?(オウゴン) シソ科オウゴンの根。緩下、利尿、抗炎症作用
甘草(カンゾウ) マメ科の多年草甘草の根。この方剤の場合は解毒作用を司る
桔梗(キキョウ) 紫の花が咲く多年草キキョウの根。
石膏(セッコウ) 天然の石膏(硫酸カルシウム)。解熱、止渇、鎮静作用
白朮(ビャクジュツ) キク科のオケラの根茎。体の水分の調整などの作用
大黄(ダイオウ)タデ科ダイオウ属の多年草の根茎。便秘解消、駆 ? 血作用
荊芥(ケイガイ) シソ科の一年草ケイガイの花穂。小さい白い花で可愛い。
山梔子(サンシシ) アカネ科のクチナシの果実。胆汁分泌促進、胃運動抑制作用
芍薬(シャクヤク) ボタン科のシャクヤクの根。
川?(センキュウ) セリ科のマルバトウキの根茎。
当帰(トウキ) セリ科のトウキの根。
薄荷(ハッカ) シソ科ハッカ属の多年草の全草。ペパーミント
防風(ボウフウ) セリ科の防風の根。
麻黄(マオウ) マオウ科の常緑小低木の草質茎。皮膚からの解毒を促す作用
連翹(レンギョウ) モクセイ科の落葉性広葉樹レンギョウの果実。消炎、解毒作用
生姜(ショウキョウ) ショウガ科の多年草の根。
滑石(カッセキ) 珪酸マグネシウムを主成分とする柔らかい石。
芒硝(ボウショウ) 硫酸ナトリウムの鉱石。便秘解消作用あり

上記のうち大黄と芒硝が便秘を解消する効果を持ちます。白朮、荊芥、防風、麻黄、連翹が解毒効果で体内の食毒、水毒、風毒などを消化管や皮膚を通じて体の外に排出します。言わば東洋医学のデトックス薬です。芍薬、川 ? 、当帰は本来補剤として働く薬ですが、防風通聖散の場合は各生薬のバランスをとる意味合いで配合されています。

本剤の適応はツムラによると以下となっています。
腹部に皮下脂肪が多く、便秘がちなものの次の諸症 高血圧の随伴症状(どうき、肩こり、のぼせ)、肥満症、むくみ、便秘

表と裏

東洋医学では病を大きく2つの概念に分けて考えます。「表(ヒョウ)」と「裏(リ)」です。

「表」は感冒で発熱、頭痛、咳がある時などに代表される状態で、病気の存在が症状の有無となって現れるものです。目に見える、言わば判りやすい病気ですね。それに対して「裏」とは病が体の内部で起こっているため、症状に現れにくくなった状態です。「表」の病が「裏」に入った病態に加え、高血圧や脂質異常症など「裏」にのみ病態が限定される場合があります。

我々が受ける健康診断や人間ドックなどはまさにこの様な「裏」の病態を見つけるために行われます。特に体質強壮な「実証」タイプの人は過剰な栄養や体力が体内に充満します。過剰な栄養や体力はやがて毒へと変化し、体の不調を生じます。これはまさに現代のメタボリック症候群の概念に通じると言えます。
有り余る栄養、毒を体の外に出す事を「瀉(シャ)する」と言いますが、この様な病態の時には漢方のデトックス薬である「瀉剤(シャザイ)」を処方する事で病態の改善を図ります。防風通聖散は「瀉剤」の代表的漢方薬です。他にも同様の目的では8番「大柴胡湯」、20番「防已黄耆湯」などを症状、体質によって使い分けます。

また防風通聖散の体内の毒を取り去る効果は、高血圧の随伴症状の改善にも有効ですし、長期間服用する事で高尿酸血症・脂質異常症の改善、糖尿病・CKD・脳血管障害の発症予防・進展抑制などにも期待が出来ます。他にも漢方の大家である矢数道明先生はさらに各種の皮膚疾患・精神疾患・喘息・蓄膿症・梅毒などに広く処方しており、中医(中国の漢方医)の先生方は感冒・肺炎などの急性疾患などにも応用している様です。単なるダイエット効果に留まらない、奥の深い漢方薬です。
治りにくいニキビの治療、便秘の治療、ダイエットのお悩みなどをお持ちの方にはまさにピッタリの処方であると考えます。

2種類の脂肪細胞

西洋医学的見地からも防風通聖散の効果は確認されています。

人間の体には2種類の脂肪細胞が存在します。脂肪を蓄積する役割の白色脂肪細胞と脂質の燃焼を司る褐色脂肪細胞です。褐色脂肪細胞の機能が高まれば、脂質が効率的に燃焼し、それに伴い白色脂肪細胞の脂肪分解が促進されます。その結果体脂肪が減少し、体重減少に繋がります。褐色脂肪細胞の機能はノルアドレナリンによって高められますが、防風通聖散にはノルアドレナリンの効果を増強する働きがある事が判っています。成分の麻黄に含まれるエフェドリンが交感神経末端からノルアドレナリンの分泌を促し、褐色脂肪細胞のβ3等のアドレナリンレセプターを活性化する事により脂肪燃焼を促進します。また、甘草、荊芥、蓮翹が脂肪細胞内にあるホスフォジエステラーゼを阻害する事によりノルアドレナリンの効果を長く持続させる働きをします。西洋医学的観点からも防風通聖散を長く服用する事で確実な体脂肪の減少が期待できるのです。

また、成分の黄 ? は粥状動脈硬化を予防する作用を持つなど、防風通聖散は成人病に伴う合併症を直接予防する効果も知られています。血液中のコレステロールや中性脂肪が防風通聖散の内服で有意に低下したなどの学会報告もあります。

ダイエット・メタボ対策

ダイエットやメタボ対策の薬として薬局で販売されている「コッコアポA」「ナイシトール」はテレビコマーシャルなどで一般の人にもなじみが高く、とても良く売れている様です。実はこれらの薬は、防風通聖散とほぼ同じ成分です。名称を変え、パッケージを工夫してあるだけなのです。ツムラやクラシエの防風通聖散は当、代官山パークサイドクリニックでは保険適応で処方しており、「コッコアポA」「ナイシトール」に較べ、リーズナブルな価格でお飲み頂く事が可能です。防風通聖散は医師の指導下で食生活の改善や運動指導とともに服用する事でいっそう効果が高まります。

漢方は飲みたいけど顆粒(粉)は苦手という人も大丈夫です。クラシエの錠剤タイプの防風通聖散があります。もちろん保険適応で処方可能です。

当、代官山パークサイドクリニックでは、この防風通聖散をはじめとした「ダイエット」に良く効く漢方の治療を行っています。「ダイエット」でお悩みの方、漢方の興味がお有りの方など、お気軽にご相談ください。

お気軽に
お問い合わせください

診療時間 午前10時-14時 / 午後16時-19時[水・土休診]
※金曜は21時まで診療

author avatar
岡宮 裕 院長
1990年 杏林大学医学部 卒業 慶應義塾大学腎臓内分泌代謝内科に入局 横浜市立市民病院・静岡赤十字病院・練馬総合病院他 腎臓病・高血圧・糖尿病・血液内科やアレルギー疾患など内科全般の幅広い医療に従事。 代々木上原の吉田クリニックにおいてプラセンタ注射を使った胎盤療法等の様々な領域について研鑽を重ねる。 2009年 代官山パークサイドクリニック 開業 2011年 海外渡航前医療センター 開設

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です