鼻づまり(鼻閉)
今回は”鼻づまり(鼻閉)”です。鼻づまりは花粉症の約85%の人が自覚しています。
花粉症の症状の中でも実は最も治療が困難なものが、”鼻づまり”です。
症状がひどくなると、両方の鼻が完全に詰まってしまい、鼻呼吸が全くできない状態になり、口のみでの呼吸を余儀なくされます。多くの花粉症患者が、とても苦しく不快に感じるのではないでしょうか?
鼻づまりの治療は、基本的に鼻水(鼻汁)に準じた治療を行いますので、鼻汁のコラムもご参照ください。
→Link : 花粉症の話2012②”鼻水(鼻汁)”
ここでは鼻閉に特に有効な治療をリストアップしてまいります。
漢方薬による鼻閉の治療
私のコラムでは何度も登場する【証 (ショウ-“体質”を意味します)】ですが、今回の「鼻づまり(鼻閉)」においても【寒証(カンショウ - 顔色が蒼白く沈衰的で手足の冷える様なタイプ)】、【熱証(ネッショウ - 顔色が赤く興奮的で熱状を帯びる人)】の方で鼻閉の原因も異なります。寒証の方の鼻閉は、鼻腔内の粘膜の浮腫によって生じます。それに対し、熱証の方の鼻閉は鼻内粘膜の充血によって生じるのです。ですので、治療に用いる漢方薬もそれぞれで異なってきます。
ではまずはその体質【証】に合わせた漢方薬をいくつか紹介したいと思います。
A. 寒証(カンショウ)の人:
127番・麻黄附子細辛湯(マオウブシサイシトウ)
19番・小青竜湯(ショウセイリュウトウ)と127番・麻黄附子細辛湯(マオウブシサイシトウ)の合剤
麻黄を含まないものとしては
119番・苓甘姜味辛夏仁湯(リョウカンキョウミシンゲニントウ)
104番・辛夷清肺湯(シンセイハイトウ)→詳しくは後述しています。
などがあります。胃腸が弱い、心疾患・重度高血圧・前立腺肥大の方には麻黄剤を含まない119番・苓甘姜味辛夏仁湯、104番・辛夷清肺湯を中心に処方いたします。
熱証(ネッショウ)の人:
2番・葛根湯加川きゅう辛夷(カッコントウカセンキュウシンイ)
最も基本的な処方であり、即効性も期待できます。特に症状が遷延し、慢性副鼻腔炎になっている場合にも高い効果が得られます。
104番・辛夷清肺湯(シンセイハイトウ)
比較的症状が長く続く鼻閉に対して有効です。石膏(硫酸カルシウム)・知母(ユリ科ハスナゲの根茎)が配合されているため清熱作用が強く、鼻の熱感・疼痛を伴う場合には特に著効です。麻黄が含まれていないため使いやすく、熱証かつ実証の人向けの処方とされていますが、冷えの悪化に十分配慮すれば寒証、虚証の人にも長期間使用が可能です。当クリニックでは漢方の併用処方などで対応しています。
鼻水(鼻汁)と同様に、鼻閉に関しても様々な漢方薬が考えられます。実際には花粉症の様々な症状と、体質【証】によって漢方薬の組み合わせも様々です。慢性的な花粉症でお悩みの方はぜひ医療期間を受診し、ご自身に最も適した漢方薬を服用してください。(医療機関によっては漢方薬を処方しないところもありますのでご注意ください。)
漢方以外の鼻閉の治療
ご自身にあった漢方薬を服用することで高い効果と即効性も期待できますが、多くの場合には上記のような漢方薬治療に一般的な西洋薬を合わせて処方することで、症状の改善をより高めています。
漢方薬治療に組み合わせる内服薬や点鼻薬、注射薬には以下のようなものがあります。
内服薬
- 抗ロイコトリエン剤(内服薬):鼻汁・鼻閉両方に有効な内服薬。眠気などの副作用も少なく使いやすい薬です。ただし即効性に欠ける点ところがあります。
点鼻薬
- 点鼻のステロイド薬:一日1~2回投与と簡便で、持続性があるが即効性にはやや欠けるものが多いとされます。定期的に使用する事で効果が高まり、ステロイドといっても体内に殆ど吸収されないため副作用は少ない安全な治療法です。
- 点鼻の血管収縮薬:市販の点鼻薬などにも配合されています。即効性がありなおかつ副作用も少ないのですが、頻用すると長期的な鼻閉を生じる事があるため、十分に注意が必要です。
その他
- 非特異的減感作療法:ヒスタグロビンという注射を1クール行う事によって、3~4か月間全てのアレルゲンに対するアレルギー反応の大幅低下を図る治療法です。副作用が極めて少ないことが特徴ですが、効果には個人差があります。1クールは原則6回で週2回程度の頻度で注射を行います。通院困難などの場合は1クール3回とする場合もございます。
※ヒスタグロビン注射に関してはこちらページもご参考ください。
コラム「花粉症の話2012 ヒスタグロビン注射」
非特異的減感作療法:ヒスタグロビン注射
ここまで『くしゃみ』『はなみず』『はなづまり』と、鼻に関する3つの症状について詳しく説明してきました。それぞれの症状で有効とされる漢方薬が複数あって、結局何を飲めばいいの?と思われる方も多くいらっしゃるかもしれません。
漢方薬は【証】にあったものを適切に処方することで、その効果が最大限に発揮されます。どれを飲むのかご自身で決めるのではなく、是非とも医療機関を受診し、ご自分の【証】にあった漢方薬を探してください。
次回はそのほかの鼻の症状についてと、これまでの『鼻』シリーズのまとめを、少しでもわかりやすくなるように書いてみたいと思います。
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