皆様もニュースなどで「新型インフルエンザ」の事は見聞きされていると思います。しかし、聞いた事はあるけれど今一つ細かい事は判らないという声をいろいろな方から耳にします。今回は新型インフルエンザのあらましを簡単に解説させて頂きます。

新型インフルエンザは正式には「パンデミック(H1N1)2009」と記載されます。2009年4月から流行が始まり、その後世界的に流行が拡大。2009年11月8日現在、世界での累計感染患者数は50万人以上、死者は6260人以上。我が国でも12月5日現在100人の死者がでています。この新型インフルエンザはもともと1918年から19年にかけて世界を席巻したインフルエンザ「スペイン風邪」のウィルスがブタに入り、ブタの間で感染持続、温存されていたものに端を発します。それが他のタイプのヒトインフルエンザウィルストリインフルエンザウィルスと遺伝子交雑を起こし、再びヒトに感染を起こすようになったものです。言わばリバイバルヒットですね。ただしこのパンデミックウィルスは季節型のA/H1N1インフルエンザウィルスよりも重症の肺炎を起こすとされており、通常のインフルエンザより生命にかかわる可能性がより高いと考えられます。実際に前回のスペイン風邪の時には感染はニューギニアとセントヘレナ島以外の全世界に拡大し4000から5000万人の死者が出たとされており、これは当時の世界人口18億人の2%以上に相当します。またその時の死者は二十代の若者に集中し、社会的にも大打撃を与えました。現在のところパンデミックウィルスはスペイン風邪の時の様な“凶暴な顔”は見せていませんが、いつ何どき病原性が高まるか予想がつかない面もあり、十分警戒が必要です。

次に予防、治療の話です。

まずインフルエンザの予防の基本はワクチンの接種です。現在新型(パンデミック)インフルエンザワクチンの優先順の接種が我が国でも行われています。ワクチン接種により理論的には新型インフルエンザの発症を82%の確率で阻止し、さらに発症した場合でも重症化や死亡する可能性を低下してくれます。また健康な成人などの積極的なワクチン接種により社会全体の予防接種率が高まると、特に乳幼児や高齢者の死亡数が顕著に低下すると言われています。自分自身の感染予防のためにも、感染的弱者の命を守るためにもワクチン接種は重要と考えます。

次に重要なのは①うがい、手洗い②マスクの着用です。

特に最近はファーストフード店の増加などに伴い、食事の前に手を洗う習慣が薄れているように思えます。スペイン風邪の流行の際、日本とユダヤ人社会は比較的被害が軽かったとされていますが、双方に共通するのは食事前に手を洗う習慣が根付いていたということです。神経質になる必要はありませんが、できる範囲でこまめに手を洗うと良いでしょう。マスクについては通常のもので十分です。大仰にウィルス対応をうたっているものもありますが、ウィルスそのものはマスクの繊維の網の数十分の一の大きさですので防御は不可能です。マスクの意義は、咳やくしゃみで放出されるウィルスをふくんだ飛沫の防御と気道粘膜の乾燥を防ぐ点にあります。人ごみに出る時、満員電車に乗る時、のどがいがらっぽい時、乾燥がひどい日などは積極的にマスクを使用しても良いですね。

さて、それでもインフルエンザになってしまった場合はどうすれば良いでしょう?

インフルエンザウィルスは鼻やのどの粘膜から体内に侵入するとヒトの細胞内で増殖を繰り返して24時間で100万倍に増殖します。そして気管支など全身に広がって行きます。その時に体の免疫が戦い、ウィルスを排除しようとするため高熱などがでます。インフルエンザに感染したら早期に“タミフル”、“リレンザ”のいずれかの薬を服用しウィルスの増殖を抑えることが重要です。これらの薬は発症48時間以内に投与しないと効果がないため、高熱などインフルエンザを疑う症状が出たらその日のうちに医療機関を受診し、医師の診察を受ける必要があります。これらは新型インフルエンザでも通常の季節型インフルエンザでも同様ですが、新型インフルエンザの方がより迅速な対応を心掛ける必要があります。

また、新型(パンデミック)インフルエンザの陰に隠れて話題にはなりませんが、今後季節型インフルエンザの流行も予想されるため、季節型インフルエンザワクチンも接種しておく事が重要でしょう。

当クリニックでは新型、季節型のインフルエンザワクチンの接種が可能です。また、発熱などの症状が出た時にも臨機応変に対応できますのでご相談ください。

※院内報 第2号より

インフルエンザについてはこちらもご覧ください。

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岡宮 裕 院長
1990年 杏林大学医学部 卒業 慶應義塾大学腎臓内分泌代謝内科に入局 横浜市立市民病院・静岡赤十字病院・練馬総合病院他 腎臓病・高血圧・糖尿病・血液内科やアレルギー疾患など内科全般の幅広い医療に従事。 代々木上原の吉田クリニックにおいてプラセンタ注射を使った胎盤療法等の様々な領域について研鑽を重ねる。 2009年 代官山パークサイドクリニック 開業 2011年 海外渡航前医療センター 開設

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