女性には閉経に伴う身体の変化である更年期障害があることが、広く知られています。すなわち、妊娠・出産を可能にする女性ホルモンの働きにより、女性は自身の健康状態の維持や女性らしい身体を維持する事も行っているため、女性ホルモンが閉経に伴い急激に低下する事によって、様々な症状を引き起こします。これが女性の更年期障害です。
女性の更年期は、女性ホルモンの低下が、比較的短期間に起こり、なおかつ閉経という分かり易い現象を伴います。そのため、女性の更年期障害は、古くから認知されています。
では、更年期障害は男性には存在しないのでしょうか?
実は、男性にも更年期は存在します。しかし、一般的にはあまり認知されていません。これはいったい、何故なのでしょうか?
その原因は“判りにくさ”にあります。
男性も女性同様、年齢とともに性ホルモンの低下をきたします。
男性における性ホルモンは、男性ホルモン=テストステロンです。
男性は、思春期になると、テストステロンは徐々に上昇し、次第に男らしい体つきとなり、ひげなども濃くなってきて、精子の造成などの生殖能力の向上などが行われます。
テストステロンは、20-30歳代がピークで、その後徐々に低下していきます。
このテストステロンの低下によって様々な身体変化が起こります。
先ずは、女性同様、男性も生殖能力の低下をきたします。すなわち、精子の形成能力の低下や、EDの傾向です。しかし、女性の場合は生殖能力の低下=閉経が短期間でおこり、なおかつ個人差が少ないのに対して、男性の場合は、男性ホルモンの低下が数十年にわたって徐々に起こり、なおかつ個人差が大きいという特徴があります。
個人差という点では、男性の中には年齢を重ねても十分な生殖能力を持っているケースもあります。例を挙げると、かの喜劇王チャールズ・チャップリンです。彼は生涯にわたって4回結婚をしていますが、末子のクリストファーが誕生したのは、チャップリンが73歳の時であるとの事です。
男性にも更年期による変化はありますが、一般的には症状は徐々に進行すると思われており、また加齢性の身体変化と見分けがつかない事も手伝って、更年期障害という病態と認識されない事が多い様です。
男性更年期障害の症状は、EDや性欲の低下などの症状に加えて、体力の低下、筋力の低下、異常発汗、気力・集中力の低下、うつやイライラ、不眠などメンタル面の変化など多岐に渡ります。そして、これらの症状が、単に加齢によるものか、精神的な疾患か、泌尿器科的なトラブルか、本当に男性更年期によるものなのかを見分ける事が困難です。
そのため、近年では『LOH症候群』とう概念が提唱され、使われています。
LOH症候群とは、Late onset hypogonadism syndrome の略で、『加齢男性性腺機能低下症候群』の略で、読み方としては『ローショウコウグン』となります。
LOH症候群というのは、多岐に渡る男性更年期の症状、所見の中で、男性ホルモンの低下を必須項目とした、男性更年期障害の概念です。
このLOH症候群の概念の優れている事は、診断基準が完全に数値化されているため、診断が明確であること。治療の適応もシンプルであるなどの利点があります。
また、実際、臨床的に治療を要する男性更年期の状態は、LOH症候群の基準を満たしているものが大多数であることもあり、男性更年期障害を専門とする医療機関では、男性更年期障害=LOH症候群としている事が多いのです。
40歳以上の男性諸兄で、以下の症状に該当する方は、ひょっとするとLOH症候群かもしれません。
① 最近特に疲れやすい、元気がない
② 異常な発汗がある
③ イライラ、不安、不眠が強い
④ 筋力が急に低下した、筋肉の量が減った
⑤ やる気がなくなった、仕事でミスが多い
⑥ 物忘れがひどくなった
⑦ 体重が急に増えた
⑧ 健診で肝機能、血糖、脂質が極端に悪化した
⑨ 血圧が急に上がった
⑩ EDなど性機能が急に悪化した、性欲が急になくなった
少しでも気になる様であれば、LOH症候群=男性更年期障害の診断、治療が出来る医療機関を受診すると良いでしょう。
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