五月病は病気なの??

五月病とは、学生や社会人が新学期や入社・移動の時期である4月を経て、5月の連休明け頃より無気力、全身倦怠感、食欲不振などを自覚するものです。五月病という病名は一般的に良く使われますが、正式な医学用語ではありません。したがって五月病の医学的定義も存在しませんが、医学用語の中では、米ハーバード大学の精神神経科医R.H.ウォルターズが提唱した意欲減退症候群(apathy syndrome , アパシーシンドローム)の概念が最も近いと思われます。

アパシーシンドロームとは、「モラトリアムによる空虚感、不安感」と定義され、10代、20代の若者に多く、真面目で几帳面な優等生タイプの人がなりやすい傾向にあります。
勉強や仕事など厳しい競争を勝ち抜き、第一志望の大学や憧れの会社、希望の部署にようやく入れたのに、さしたるきっかけもなく、急激に無気力となり、ひどい場合は登校拒否や出社拒否に陥る事もあります。
不安、抑うつ、焦燥などの精神的症状に加えて、不眠、頭痛、めまい、動悸、繰り返す感冒症状、食欲不振、悪心、下痢、全身倦怠感などの身体的症状も現れます。

もっとも警戒しなければならないのは、五月病の症状が長く続き、悪化していくことで「うつ」などの病気に移行してしまうことです。現代社会において、「うつ」は大きな社会問題として取り上げられるほど深刻になっています。「うつ」恐ろしさは、現代社会のストレスの中で【誰でも・どんな元気な人でも罹ってしまう可能性がある】という事です。五月病とうつ病の医学的な関係は立証されていませんが、恐ろしい「うつ」を未然に防ぐためにも、五月病だと簡単に考えずにしっかりとケアしていきましょう。

もし自分も五月病かな?と思ったら、まずは時間を見つけて思いっきりリフレッシュすることをお勧めします。趣味に没頭するなど、ONとOFFを切り替えることが重要です。また新入社員の皆さんは、久しぶりに学生時代の友人と会って、お酒でも飲みながら仕事についての話や相談をするのも良いかもしれません。多少疲れていても一日中寝ていたり、部屋に閉じこもっていては逆効果です。

しかしながら、現代社会においてはなかなか時間を取り難い環境の方も多いと思います。そういう方はなかなか症状が改善されないかもしれませんので、医療機関に相談してみるのもよいかもしれません。五月病と考えられる場合、西洋医学的には、うつ病や統合失調症の陰性症状との鑑別を行ったうえで対症療法薬の処方による治療を行います。東洋医学的にはストレスを抱えた状態を「気滞」と呼び、「気」の異常として病態や体質に即した漢方薬などによる治療を行います。特に漢方薬には「気滞」の改善、「気」の上昇・向上を期待できるもの (半夏厚朴湯、六君子湯、香蘇散、加味帰脾湯、四逆散、抑肝散) などがありますので体に負担が少なく改善が期待できます。

当クリニックは一般的な内科です。五月病のような症状で心療内科・精神科にかかるのはなかなか敷居が高いと感じる方でも、お気軽にご来院ください。その他、五月病の症状に隠れた様々な体調の悩みについてご相談に乗ることが可能です。
また、疲労回復に効果の高いビタミン(ニンニク注射)なども効果が期待できるかもしれません。なにかと疲れがちな時期になりますが、しっかりと体調のケアを行い、乗り切っていきましょう。

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岡宮 裕 院長
1990年 杏林大学医学部 卒業 慶應義塾大学腎臓内分泌代謝内科に入局 横浜市立市民病院・静岡赤十字病院・練馬総合病院他 腎臓病・高血圧・糖尿病・血液内科やアレルギー疾患など内科全般の幅広い医療に従事。 代々木上原の吉田クリニックにおいてプラセンタ注射を使った胎盤療法等の様々な領域について研鑽を重ねる。 2009年 代官山パークサイドクリニック 開業 2011年 海外渡航前医療センター 開設

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