いっこうに収束の気配が見えない新型コロナウィルス感染症。
その原因の一端は、ウィルスが次々と変異を繰り返し、ワクチンや治療薬などの対策が間に合わないという点があります。
現在流行している新型コロナウィルス感染症の原因ウィルスはオミクロン株のBA5系統で、強い感染性と比較的弱毒化=軽症者・無症状者が多いという特徴から感染拡大をきたし、第七波を引き起こしました。
ようやく第七波が落ち着きつつある感がありますが、ここにきて気になるニュースがあります。
BA2.75系統という新型コロナウィルスの変異株の存在です。
BA2.75は2022年6月にインドで初めて確認され、インドでの感染拡大を引き起こしました。
そのBA2.75が、BA5に置き換わって世界中で流行する可能性があるとされています。次に流行する変異株と目されているのです。
BA2.75は、BA5の前に流行したBA2から限定的に変異(車のマイナーチェンジの様なもの)した75番目の亜種であるためにBA2.75と呼称されています。
BA2.75は、他のBA2亜種よりも変異した部分が大きく、従来のBA2と症状などが大きく異なります。
BA2.75はBA2よりも、現在流行しているBA5に性質が似た変異株とも言われていおり、あたかもBA2とBA5のハーフといった感がある変異株です。
そのため、BA2.75は、ギリシャ神話から半人半獣のケンタウロスにちなんで”ケンタウロス・ウィルス”とも呼ばれています。
BA2.75は、2022年6月2日に世界で初めてインドで確認されました。
その後もヨーロッパ各国、アメリカ、カナダ、オーストラリアなどで確認され、拡大傾向が続いています。
我が国でも、兵庫県で一例、海外渡航歴のない女性の感染が2022年6月24日に確認されており、その後も各地で発生が散見されています。
今はまだ我が国での感染報告は少ないのですが、少なくともBA2.75が確実に市中感染を起こしているのです。
そして今後、現在第7派で広まっているBA5が、BA2.75へと置き換わっていくのではないかと推測されています。
このBA2.75=ケンタウロスの特徴について、専門家の間ではこのように言われています。
『感染力、重症化リスクについてはまだ不明な部分が多いが、感染力が強いことは間違いがない。インドの拡大状況からするとBA2.75は免疫逃避能力が高く、免疫の効果が効きにくいのではないか。』
免疫逃避能力が高いという事は、ワクチンによる予防効果が少ない=ワクチンが効きにくいという側面があります。
我が国では、2022年10月より、オミクロン対応の2価ワクチンの接種が始まりますが、このワクチンはオリジナルオミクロン株であるBA1を想定して造られているため、有効性が少ない事が考えられます。
新たな変異株に対応して急遽製造された新しいコロナワクチンですが、ワクチンが実戦投入されたときにはすでに時代遅れになっているのです。
今後ケンタウロスに対応したワクチンも開発される事になるかもしれませんが、そのワクチンもすぐに時代遅れとなってしまう可能性があるのです。
このあたりが、新型コロナワクチンの悩ましいところです。
オリジナル=最初の新型コロナワクチンの接種開始直後は、二回の接種終了後の感染防御率は90%を超えるなど、期待通りの効果を見せました。
これで、ワクチンによる新型コロナウィルス感染症の抑え込みが可能になると思えたものです。
しかし、その後のBA1、BA2の流行ではワクチンの有効性は著しく下がりました。
それでも感染防護の確率は70%以上。これはサッカーのゴールキーパーが枠内シュートをセーブするのと同様の確率です。
昨今のBA5になると、防御率はさらに低下し、50~70%と言われています。
つまり、有効ではないワクチンとされていますが、それでも半数以上は防いでくれるのです。
また、ワクチンには感染防御の他にも重要な役割があります。
それは重症化予防です。
現在のBA5の重症者を見ると、ワクチン未接種の患者が有意に多いという結果が出ています。
BA2.75=ケンタウロスが、BA5の特徴を半分引き継いでいるのならば、コロナワクチンによって重症化を防ぎ、ひいては生命を守る事にもつながると考えます。
感染予防に加えて”命を守るためのワクチン”、これが今後の新型コロナワクチンの考え方になっていくと思われます。
国際的な流れを受けて、我が国でも近いうちに、今後生後6か月から4歳児に対する新型コロナワクチンの接種が開始されると予想されます。
ますます混迷の様相を呈する新型コロナウィルス感染症。
それでも我々は、戦い抜くしかないのです。
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