男性更年期=LOH症候群と骨粗鬆症について話をします。
女性更年期と骨粗鬆症のリスクについては、ご存知の方も多いかと思いますが、LOH症候群と骨粗鬆症、実は意外に関連があるのです。
骨粗鬆症とは、後天的に骨の密度の低下ないしは骨質の劣化により骨折を生じやすい状態です。多くの場合は主に加齢による影響の原発性骨粗鬆症ですが、他に要因のある続発性骨粗鬆症もあります。
骨粗鬆症は、骨密度が20-44歳の平均であるYAM値の70%以下になると高い確率で存在すると言われていますが、これは、50歳以降の女性の実に30%以上を占めると言われています。これには、閉経による女性ホルモン低下が大きく影響しています。
他に原因がある続発性骨粗鬆症の場合は、以下の様なものがあります。
① ステロイドホルモンの長期間の内服
② 長期間にわたる多量のアルコール摂取
③ 喫煙
④ 運動不足
⑤ 糖尿病
⑥ CKD(慢性腎臓病)
⑦ 副甲状腺機能異常
⑧ 動脈硬化症
⑨ 関節リウマチ
⑩ COPD(慢性閉塞性肺疾患)
⑪ 女性ホルモン低下
女性の病気といった認識の骨粗鬆症ですが、男性の骨粗鬆症も、各年代で女性の半数程度存在します。
さらに、骨粗鬆症になった後の病状の進行や、骨折などのイベント発生後の予後については、男性の骨粗鬆症の方が、女性より優位に悪化し、健康生命に関わると言われています。
実は、骨粗鬆症は、男性も十分に気をつけなくてはいけない問題なのです。
また、男性ホルモン低下=LOH症候群に於いては、骨粗鬆症のリスクはさらに高まります。何故でしょうか?
先ずは、女性ホルモン(エストロゲン)低下です。男性にも女性ホルモンは存在しますが、男性ホルモン=テストステロンから転換される形で女性ホルモンが造られます。男性ホルモンのみならず、関連するホルモン系のすべてが低下傾向にある通常のLOH症候群に於いては、男性ホルモン=テストステロンに加えて、女性ホルモン=エストロゲンも低下しているため、骨密度が低下するのです。
次には、糖尿病や動脈硬化を介した骨粗鬆症のリスクが上昇する点です。
LOH症候群は、高血圧や脂質異常、糖尿病につながる耐糖能異常、CKDにつながる腎機能を悪化させる傾向があります。これらは前述の続発性の骨粗鬆症リスクにもありますが、テストステロンの低下はこれらの疾患を介して、続発性骨粗鬆症を悪化させる可能性があります。
他にも、LOH症候群では、テストステロン低下により、筋肉量が減少することによる運動量減少や、意欲低下に伴う活動性の低下を生じ易いのですが、この身体活動性低下が骨粗鬆症に悪影響を与えます。
これらの事を考えると、骨粗鬆症は男性にとっても決して他人ごとではない問題であり、特にLOH症候群がある場合には、十分に気を付けるべき問題であると考えます。
実際の研究でも、血中テストステロン量と骨密度には有意に相関関係がある事が判明しています。また、テストステロン投与により骨密度が上昇したという報告もあります。
しかし、テストステロン投与により、実際に骨折のリスクが減少するというところまでは証明されてはいません。
LOH症候群があり骨粗鬆症を合併している場合は、骨折のリスクを軽減するという意味では、骨粗鬆症の直接治療は絶対に必要です。
ただ、骨粗鬆症の進行の予防や治療効率を上げるという意味では、男性ホルモンを上昇させる治療(テストステロン注射やサプリメントなど)の併用は極めて有効であると考えます。
骨粗鬆症を含む運動機能の問題については、近年、“虚弱性”という意味の言葉からの造語である「フレイル」という観点からも注目されています。
今後の医療の展望を語る上でも欠かせない、このフレイルとLOH症候群の兼ね合い、それに対する東洋医学の有効性については、また次の機会に話したいと思います。
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