本日(2019年1月24日)現在、わが国でインフルエンザが猛威をふるっています。一週間で新たにインフルエンザと医療機関で診断された人は163万人。全国40余りの都道府県が要警戒レベルになっています。
今シーズンのインフルエンザ流行の原因は、ワクチン不足によるワクチン摂取率の定価がその一因になっています。家庭や会社や学校などのコミュニティでの摂取率が低下すると、インフルエンザの感染率が飛躍的に高まります。
家庭でのワクチン摂取を同居する六人家族を例に取って説明します。
両親、祖父母、高校生の兄弟の六人の家庭で、兄が高校三年生で大学受験を控えているとします。このケースで、ワクチンを受験生である兄だけが受けた場合に比べて、家族全員がワクチンを受けると、受験当日にインフルエンザに罹患する確率をちょうど半分にできると言われています。さらに学校のクラスメイトの摂取率なども上げると、さらに受験当日にインフルエンザになる確率を減らすことが出来ます。インフルエンザのワクチンは、コミュニティ全体で摂取する事が重要といえます。

インフルエンザの予防という点では、ワクチンは有用ですが、完全ではありません。
ワクチンの接種後にも、感染確率を軽減させるために重要な事としては、手洗い、マスク、うがいがあります。

先ず、直接的な感染予防という観点で最も重要なものは『手洗い』です。実はインフルエンザの感染経路として最も多いのは、インフルエンザウィルスや飛沫の直接吸引ではありません。実は、インフルエンザウィルスの汚染箇所に触れた手で自分の口や食べ物を触った事に起因する感染が最も多くを占めます。
それを防ぐためには、こまめに手を洗う事。そして、洗っていない手で手掴みで食物を食べない事が重要です。
昔の日本人はよく手を洗いました。以前は飲食店などでも、それがフレンチレストランであってもおしぼりが用意されている事が多かった記憶があります。マクドナルドなどでも、ポテトを手掴みで食べる事には大きな抵抗を感じる人が多かったものです。ましてや、ケンタッキーフライドチキンの、脂のついた“指をしゃぶるほどの美味しさ”というCMなどは全くもって理解不能。洗っていない手でフライドチキンを手掴みで食べ、その手をきれいにしゃぶるという行為に疑問を抱かないアメリカ人の感覚には信じられないものがありました。
しかし、現代の日本では、手を洗う習慣については、やや薄れていると思います。やはり、可能な範囲内でこまめに手を洗ったり、アルコールティッシュを使うなどすると、インフルエンザ予防に効果的です。また、これは、ノロウィルスをはじめとする感染性腸炎の予防にもつながりますので、是非とも実践して頂きたいと考えます。

次にマスクです。マスクは、インフルエンザを他人に感染させないという面で最も有用な手段です。
実は通常のマスクの繊維の間隔は、インフルエンザウィルスの数十倍の大きさがあり、マスクでウィルス自体の侵入を直接防ぐことは不可能です。ウィルスを通さない厳重なマスクも存在しますが、高価な上に通常の呼吸を行うことも困難となる代物で、とても日常のマスクとして使用する事は非現実的です。
しかし、通常のマスクでも、ウィルス自体の数千倍のサイズである、ウィルスが付着する飛沫を防ぐには十分な効果を持ちます。そのため、マスクは有用であると考えます。
感染者がマスクをすることによって、ウィルスを含んだ飛沫の飛散を防ぎ、周囲の人たちへの感染機会を軽減する事が可能です。
また、非感染者の予防という面からもマスクは有効です。先ずは、インフルエンザウィルス自体は防げなくても、ウィルスを数多く含んだ飛沫の吸入を防いでくれる点は有用です。そして、副次的なマスクの効果としては、呼気に含まれる水分を逃さない事で、気道の湿度を上げ、気道粘膜の乾燥を防ぐというものがあります。気道粘膜の乾燥が抵抗力を弱め、インフルエンザ感染のリスクを高めるため、マスクによる防御は大切です。気道を潤すタイプに特化したマスクも販売されており、うまく使い分けると良いでしょう。
マスクをしていることによって、指で無意識に口を触るという行為が減ることも、地味ですがインフルエンザ感染の予防には効果的です。

うがいについても、私は感染予防に有用と考えます。
ひと昔前は、うがいが感染予防の主役とされていました。しかし、現在、うがいの直接的な感染予防効果は疑問視されており、感染予防のガイドラインからも除外されているのが実情です。
それでも私が、インフルエンザ感染予防にうがいが効果的と考えるのは、うがいによる口腔粘膜の洗浄と粘膜の乾燥防止効果です。マスクの項でも述べましたが、粘膜乾燥を防ぐことは、局所免疫を高めるため、感染予防には有効です。
うがいは有効ですが、イソジンに代表される強めのうがい薬については、インフルエンザの予防という観点からは疑問が残ります。粘膜を傷つける可能性があるからです。
うがいを行う際は、ぬるま湯でうがいをすることで十分効果があると考えます。
うがいの効果を高める成分もあります。
身の回りの物では、緑茶などの成分のカテキンです。カテキンは、インフルエンザウィルスのスパイクの部分と、身体の細胞のジョイントの接合を阻害する事によってインフルエンザ感染を予防する効果があります。飲み残しのお茶などを、捨てずに置いておき、うがい用に使うと良いでしょう。
また、漢方の生薬である甘草も有効です。甘草湯や桔梗湯といった漢方を白湯にとかして、うがいもしくは服用する事も効果的です。
糖分が感染防御に有効という話もあります。私が聞いた話では、コーラでうがいをすると良いというものですが、いささか眉唾な気もしますが・・・。

いずれにしても、上記の方法をうまく組み合わせて、万全なインフルエンザ予防を心掛けたいものですね。

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岡宮 裕 院長
1990年 杏林大学医学部 卒業 慶應義塾大学腎臓内分泌代謝内科に入局 横浜市立市民病院・静岡赤十字病院・練馬総合病院他 腎臓病・高血圧・糖尿病・血液内科やアレルギー疾患など内科全般の幅広い医療に従事。 代々木上原の吉田クリニックにおいてプラセンタ注射を使った胎盤療法等の様々な領域について研鑽を重ねる。 2009年 代官山パークサイドクリニック 開業 2011年 海外渡航前医療センター 開設