新型コロナウィルスの感染拡大について、ここ2週間が山場であるとの政府見解が出るなど、世間の関心が高まっている昨今です。
新型コロナウィルスを始めとする一般的なウィルス感染に対しては、人混みを避け、マスク、手洗いなどの一般的な対策を行う事が最も重要です。しかし、感冒症状が出てきたとき、すなわち『かかったかな?』となった瞬間にも対応策はあります。
それは、ずばり漢方薬を飲むことです。

東洋医学的な観点、すなわち紀元2世紀頃に確立した医学理論では風邪については、以下のように考えられていました。
風邪とは、邪気=邪悪な何者かが吹く風に乗ってやってきて、我々の身体表面、特に首筋に取り付き、徐々に身体内部に侵入していくというものです。これを戦国時代の城攻めに例えれば、感染の初期については、敵の兵士が城壁に取り付いてよじ登ってくるイメージです。
この時、最も有効な対応は、城壁の上から石や熱湯を敵に浴びせかけて外に追いやることです。
同様に風邪の初期には、体表に取り付いた邪気を発汗や発散の効果によって体外に追い出す処方=解表剤を使うと効果的です。
解表剤は、『麻黄(マオウ)』という生薬が使われており、代表的な漢方としては、麻黄附子細辛湯、葛根湯、小青竜湯などがあります。
その中でも『麻黄附子細辛湯(マオウブシサイシントウ)』は、三種類の生薬のみから構成されるシンプルな解表剤であるため、即効性に優れ、また強力に身体を暖める作用があるため、風邪のひき初めには最も有効です。
また、この時期はスギ花粉が多く飛散しており、花粉症なのか風邪なのかよくわからないことも多いかと思われます。この様な場合に有効なものが『小青竜湯(ショウセイリュウトウ)』です。小青竜湯はスギ花粉症治療で最も良く使われるスタンダードな漢方でもあるため、花粉症専用の漢方というイメージを持っている方も少なくない漢方です。しかし小青竜湯は、かつての新型インフルエンザであるスペイン風邪が流行した時に治療薬として頻用され、我が国のスペイン風邪被害の軽減に大きく寄与したとされています。また、小青竜湯に含まれている五味子という生薬は、皮膚や粘膜を丈夫に保つ働きもあるため、花粉症がある人の風邪の予防にも効果的です。

これらの漢方を上手に利用して、ウィルス性の風邪に対応していきましょう。
ただし、風邪の症状は軽減出来ても、感染が成立している場合は、知らず知らずに他人に感染を広げてしまう可能性があります。
例え初期症状が抑えられていたとしても、風邪をひいた実感がある場合は、感染予防の観点から、仕事や外出を数日間は控えるようにすることが肝要です。

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岡宮 裕 院長
1990年 杏林大学医学部 卒業 慶應義塾大学腎臓内分泌代謝内科に入局 横浜市立市民病院・静岡赤十字病院・練馬総合病院他 腎臓病・高血圧・糖尿病・血液内科やアレルギー疾患など内科全般の幅広い医療に従事。 代々木上原の吉田クリニックにおいてプラセンタ注射を使った胎盤療法等の様々な領域について研鑽を重ねる。 2009年 代官山パークサイドクリニック 開業 2011年 海外渡航前医療センター 開設