新型コロナウィルスの話  ☆手指消毒にはお酒を・・?☆  2020.4.14

新型コロナウィルスに対する緊急事態宣言を受けて、様々な工夫が行われています。
当クリニックがある東京都渋谷区は、代官山の町のショップが軒並み閉店となり、渋谷のスクランブル交差点の人通りや井の頭線の混雑率も休日には大幅に減少した感があります。
しかし、平日は通勤する人を中心にまだまだ人出の減少は限定的であり、皆不安を抱えながらも仕事に頑張っているのだなあと思います。
かくいう私も、医療従事者の端くれとして、通勤電車で小一時間かけて仕事場に通っているのですが。

ところで、新型コロナウィルスに関連した事として、マスクと消毒液の不足があります。
マスクに関しては、本来は医療用として使われていたサージカルマスクが一般家庭だけでなく、医療機関に於いても不足する事態があり、我々医療従事者ですら入手のためにスーパーや薬局に行列するという状況となっています。
それに対して、我が国では“洗って再利用できる布製マスク”を全国民に配布するという政策を実施するとの事はご存じと思います。
布マスクは、ウィルス自体からの感染防御という面では、効果は極めて懐疑的と言われています。そのために、全く無駄な政策であるとすら言われています。
しかし、ウィルスを直接の防御はしない布マスクでも、感染者が咳やくしゃみをする事によるウィルスを大量に含んだ飛沫は防御してくれます。また、感染した人がマスクをすることによって、他者に感染させる危険を大幅に減らす事が可能です。
また、布マスクは喉や気管の湿度を高め、乾燥からくる気道粘膜の荒れを防ぎ、ウィルスからの感染防御から防いでくれる効果があります。
アベノマスクと揶揄されている今回の布マスクですが、マスクをしないよりは、布マスクでもつけた方がはるかに良いと私は思います。

マスクと同様に不足しているのが、アルコール消毒液です。
消毒液の使用目的には、手指などの身体の消毒と、食器やドアノブなど物品の消毒などがあります。この両者に使えるものがアルコール消毒液です。
不足するアルコール消毒液の代用としては、物品などの消毒には、ハイターなどの商品名で知られる次亜塩素酸が使えます。次亜塩素酸は、適切に使用すればアルコール消毒液よりもウィルスに対する効果が強く、医療の現場でも広く使われています。
一方、手指など身体の消毒などには、そのままでは人体に対して毒性を有する次亜塩素酸は使えないためアルコール消毒液を使う必要があります。
そのアルコール消毒液が入手出来ない場合はどうすれば良いのでしょうか。
アルコールと言って、先ず思い浮かぶのがお酒です。
アルコール消毒液の代用として、アルコール飲料は使えるのでしょうか?

アルコール消毒液は、一般的には濃度80%程度のものが使われる事が多いようです。市販の手指消毒用として有名な“手ピカジェル”を例にとると、アルコール濃度は76.9%以上(76.9~81.4%)となっています。アルコールにグリセリンなどを添加して、扱いやすいジェル状にした、使いやすい消毒液となっています。
細菌・ウィルスに有効なアルコール濃度は60%以上、その中でもウィルスの外側の構造であるエンベロープを破壊する=ウィルスを破壊する事ができる濃度は75%以上と言われています。
それに対して、飲料のアルコール濃度は一般的には遥かに低い濃度となっています。
ビールはアルコール濃度5%程度。ワインは12%、日本酒16%、焼酎25%。これでは全然足りません。
ウィスキーでも40%。ウォッカ40%台後半。ウィスキーやバーボンの原酒でやっと55~58%。ストレートで飲むと火を吹きそうになるウォッカやウィスキーの原酒ですら、消毒液として使うには濃度不足となっています。
では、お酒=飲料用アルコールでは消毒液として通用するものはないのでしょうか?

実はウィルスに効く高濃度のお酒はあります。
一つはスイス発祥でフランスなどで良く飲まれる薬草酒、アブサンです。アルコール度数75%以上。画家のゴッホが心身に異常をきたす原因を作った酒として有名になるなど、フランスではあまり良いイメージがないお酒となっています。
しかし、スイスでは、食前酒としてアブサンに割水をドリップしながらチビチビと飲んだり、砂糖を加える(とういか角砂糖に垂らす)などして楽しんでいます。少なくともショットグラスでストレートとして飲むお酒ではありません。
もう一つはカリブ海諸国で愛飲されているラム酒の原酒の一つ。アメリカ合衆国で造られているラム酒である“ロンリコ151”です。アルコール濃度75.5%。
この2つの酒は、ウィルスを抑制するアルコール濃度60%を超えているのみならず、ウィルスのエンベロープ破壊が期待できるアルコール濃度75%を超えています。
アブサンとロンリコ151は、ウィルスに対する効果を有するアルコール液、すなわち手指消毒用のアルコール消毒液の替りに使えるお酒となっています。

もちろん、お酒を消毒用に流用する事は本来認められてはいないのですが、緊急事態宣言が発令された現在、厚生労働省も、手指消毒用に限り例外事項として認めているようです。
それを受けて、富山県の老舗、若鶴酒造が、新たに高濃度アルコール『砺波野スピリット77』を販売しています。アルコール度数77%。有難いことに、医療機関に優先して販売してくださる様です。(当クリニックではまだ入手してはいませんが)

当、代官山パークサイドクリニックでは、手指消毒には医療用のアルコールを使っていますが、私個人的には、自宅の手指消毒には前述のロンリコ151を使っています。
時々、消毒と称してロンリコをロングカクテルにして私の晩酌に供しているのは内緒です。

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岡宮 裕 院長
1990年 杏林大学医学部 卒業 慶應義塾大学腎臓内分泌代謝内科に入局 横浜市立市民病院・静岡赤十字病院・練馬総合病院他 腎臓病・高血圧・糖尿病・血液内科やアレルギー疾患など内科全般の幅広い医療に従事。 代々木上原の吉田クリニックにおいてプラセンタ注射を使った胎盤療法等の様々な領域について研鑽を重ねる。 2009年 代官山パークサイドクリニック 開業 2011年 海外渡航前医療センター 開設