漢方治療についての話です。

 話は花粉症から少し離れます。頭痛の治療の話です。実は漢方治療の弱点の一つが頭痛の対症治療です。
葛根湯や31番の呉茱萸湯(ごしゅゆとう)などが使われますが効き目は正直今一つの感があります。
実は漢方治療が体系化され始めた2000年程前などには特効薬となる成分が有ったため、治療方法がその生薬成分に依存していた様なのです。
その生薬とは、チャヨウ(茶葉)、単なるお茶の葉です。つまりお茶に含まれるカフェインで頭痛を治していたのです。
現在でも124番の川?茶調散(せんきゅうちゃちょうさん)にチャヨウは使われています。

これが実は花粉症、特にアレルギー性鼻炎の症状にも理論的には著効するはずなのです。またカフェインが入っていれば、お茶ではなくてもコーヒーでも症状を軽減してくれるはずです。
しかし、現在カフェインで頭痛や花粉症を治そうとする人はいません。
何故なら効かないからです。カフェインはアルコールや禁止されている薬物に比べても非常に依存性になりやすい性質を持っています。
おそらく皆様も一カ月間カフェインの入ったものを全く摂取しないという事は無いはずです。
そのため我々現代人は大人になってからは常にカフェイン中毒の状態にあるためチャヨウをはじめとするカフェインが効かないのです。
2000年前の中国ではお茶は隣国の王への贈り物になる程の貴重品でした。
ですから一般の人々にとっては高嶺の花、間違っても中毒になる程飲めませんでした。
ですから当時は著効したのです。まるで幼稚園児がコーヒーを飲んだ時の様に。交感神経が優位になる事により、ある一定時間は鼻水などが治まります。
また心臓がドキドキして体が熱くなり精神的にも活性化されます。現代人でも脱カフェインをすれば当時の人の様にお茶やコーヒーで花粉症をコントロール出来るかもしれません。
さて、あなたは花粉症のためにコーヒーやお茶一切を断つ事は出来るでしょうか?
ちなみに私は間違っても出来ません。どこかに脱カフェインしなくても花粉症に効くお茶は無いのでしょうか?

実はあります。「べにふうき」という静岡などで栽培されているお茶が実に良く花粉症の症状に効きます。私も十年程前に静岡県の病院で働いていた事があります。
その時に茶葉栽培農家の方からいただいた「べにふうき」のおかげでだいぶ楽をさせて頂きました。
ところがその後この「べにふうき」がペットボトル飲料になるなど有名になり、良質の茶葉が手に入らなくなってしまったのです。その後も僕は時々ペットボトルや市販品の茶葉で「べにふうき」を買っています。
しかしその効果は良質の茶葉に比べると全く別物としか思えない程弱く、単なるお茶として飲んでいます。残念な事です。

「べにふうき」ほどではないのですが、もう一つお勧めのお茶があります。

韓国で飲まれている「オミジャ茶」です。

オミジャは中国や日本では五味子と言い、実は花粉症のスタンダードの漢方薬である19番の小青竜湯の主成分の一つです。
中国では北京郊外など各地で生産しており、韓国では済州島で多く栽培しています。
可愛い小さな赤い実の生薬で、水出しもしくは軽く煮出した後ハチミツなどで少々甘味をつけて飲みます。
これが鼻炎にも効くのですが、花粉症による喉のイガイガやアレルギー性気管支炎様の咳に特に良く効きます。五味子も良質のものを入手するのが困難ですが、「べにふうき」よりは簡単です。
現在、個人的には五味子を漬け込んだ「五味子酒」を作っています。
秋位には出来るので楽しみです。五味子のお茶は市販なスティックタイプの五味子茶を買ってきてクリニックのスタッフと飲んでいます。砂糖が入って甘ったるいのが欠点ですが、気軽に楽しめます。
当クリニックでは、五味子へのこだわりを漢方治療にも生かしています。もちろん保険適応の漢方治療です。
例えば19番の小青竜湯に関しても、当、代官山パークサイドクリニックでは下記の4種類を使い分けています。

  • オースギ 小青竜湯エキス:
    熟成した五味子を配合しやや酸味のある製剤1日3回    私が飲んだ限りは最も効果が高かった
  • ツムラ  小青竜湯エキス:スタンダード薬。生薬の品質が安定するなど最も信頼
    1日3回    性が高い。他のエキス剤との組み合わせも行いやすい。取り扱い薬局が多い。
  • クラシエ 小青竜湯エキス:1日2回である。スティック状で飲みやすい。
    1日2回
  • オースギ 小青竜湯・錠剤:どうしても顆粒が飲めない人に。
    1日3回

僕自身も漢方薬を細かく使い分ける事によって治療効果の違いを実感しています。皆様もお気軽にご相談ください。

花粉症の根治治療の話をします。

花粉症を全く出なくしてしまう方法もあります。

減感作療法」という治療があります。これは濃度の薄いアレルゲンの抗原液を注射で週一回の割合で数年間にわたって続けるという方法です。
中断すれば即治療失敗、その上治療が成功するかはやってみないと判らないというものです。
おまけにスギ花粉症の減感作療法は他のアレルゲンに比べて成功率が低いと言われています。現在ではあまり行われなくなっています。

 減感作療法については、現在面白い取り組みがされています。「スギ花粉症緩和米」というものです。
毎日の食事で減感作療法が出来れば注射の苦痛や通院の手間が省けます。この花粉症緩和米は抗原決定基(エピトープ)というものを利用しています。
エピトープとは、花粉の表面にあって体の抗体が花粉を異物として認識する部分の事です。
花粉症緩和米では米のいくつかあるエピトープの一つをスギ花粉のエピトープに置換してあり、それにより体の中にスギ花粉が入ったと認識させる事が出来ます。
このスギ花粉症緩和米を毎日摂取する事により、苦痛の無い減感作療法が可能になります。
注射による減感作療法に比べると効果を疑問視される事も多い治療ですが、マウスによる動物実験ではスギ花粉による抗原量が70%以上低下するなど一定の効果は得られています。
現在安全性の確認などが慎重に行われていますが、個人的にも大変興味のあるところです。

 漢方での根治治療という方法もあります。詳しく話すと膨大になるのですが、簡単に言うとその人の体質に合わせた漢方薬を長く服用し体質改善を図る事により花粉症を克服する、というものです。
これは前述の生活習慣や食事内容なども含む総合的な治療を各人の状態に応じて作り上げて行くことになります。
興味がお有りの方は当クリニックでも相談に乗ります。

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診療時間 午前10時-14時 / 午後16時-19時[水・土休診]
※金曜は21時まで診療

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岡宮 裕 院長
1990年 杏林大学医学部 卒業 慶應義塾大学腎臓内分泌代謝内科に入局 横浜市立市民病院・静岡赤十字病院・練馬総合病院他 腎臓病・高血圧・糖尿病・血液内科やアレルギー疾患など内科全般の幅広い医療に従事。 代々木上原の吉田クリニックにおいてプラセンタ注射を使った胎盤療法等の様々な領域について研鑽を重ねる。 2009年 代官山パークサイドクリニック 開業 2011年 海外渡航前医療センター 開設

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