大それた表題で恐縮です(汗)題名だけ見るととても難しい内容に思えるかもしれませんが、中身はとってもシンプルです。花粉症の薬、医療機関と薬局のどちらがお得なのか!?という点について少しまとめてみました。

 花粉症の治療薬を、医療機関を受診せずに薬局で買われる方も多い様です。一説によると、医療機関の処方箋の薬で治療される方と薬局で市販薬(OTC)を買って治療される人の比率は4:6だそうです。

アレジオン10

 市販の花粉症治療薬は、第一世代抗ヒスタミン薬に代表される“注意力低下などの副作用が大きい薬”が主流でしたが、近年、医療機関でのみ扱われていた薬が用意される様になるなど、副作用の少ない治療薬も手に入る様になりました。例えば第二世代抗ヒスタミン薬であるエピナスチン塩酸塩は、従来は医療用でしか存在しませんでしたが、今年から市販薬(OTC)としても買えるようになりました。ただし、第一種医薬品という扱いになりますので、薬剤師が常駐する薬局でしか販売されず、販売時には薬剤師から薬に関する詳細の説明を受ける事が条件となります。エピナスチン塩酸塩は、アレジオンという商品名で以前より医療機関で処方されていましたが、現在は、アレジオン10という商品名で市販薬(OTC)として発売されています。

 このアレジオン10ですが、希望小売価格では、6錠入り1箱・1,280円、12錠入り1箱・1,920円となっています。それに対して処方箋でエピナスチン塩酸塩を出した場合の薬価※1は、オリジナル薬のアレジオン10㎎が1錠・120,7円、20㎎が一錠・162,9円。ジェネリック医薬品(後発医薬品)であるエルピナン10mgが一錠・73,3円、20㎎が1錠・110,6円となっています。
※1 薬価とは国よって決定される医療用医薬品の公定価格のことです。

 エピナスチン塩酸塩ですが、医療機関で処方する場合の成人標準量は一日1回20㎎となっています。市販薬(OTC)のエピナスチン塩酸塩の10mg錠は一日1錠ではやや軽めの効き目、1日2錠で標準的な効き目となっています。

 スギ・ヒノキ両方の花粉に対してアレルギーを持つ花粉症の人の場合、花粉症の薬を飲む期間は、2月第二週から5月第1週までの約12週間になります。この間エピナスチン塩酸塩を標準量(1日2錠)で飲み続けたとすると、薬局で市販薬(OTC)を購入し続けた場合は、アレジオン10で168錠が必要になります。すなわち、12錠入りが14箱で、1,980円×14箱=27,720円となります。

それに対して、医療機関でエピナスチン塩酸塩を処方された場合にかかる費用は次の様になります。

例えば、初診が2月上旬で一回4週間分処方、花粉症期間中に再診で2回診察だったとすると

クリニックでかかる費用:

初回1,010円 (初診料+処方箋料)
2,3回目570円×2回=1,140円 (再診料+処方箋料)
合計2,150円

薬局でかかる費用:調剤料+薬代

アレジオン20㎎約1.840円 (4週間分)
エピナスチン20㎎約1.420円 (4週間分)

総計:

アレジオン20㎎(オリジナル)の場合クリニックでかかる費用2,150円 + 薬局でかかる費用 約1,840円×3(12週間)=約7.670
エピナスチン20㎎(ジェネリック)の場合クリニックでかかる費用2,150円 + 薬局でかかる費用 約1,420円×3(12週間)=約6,410

※この価格はあくまで最低金額の一例です。曜日や時間帯、診療内容によって料金は変動いたします。

この様に市販薬(OTC)を薬局で購入するのと、医療機関を受診して処方してもらうのでは、かかる金額に大きな違いがあります。さらに、正確に安全に治療を受けるというメリットを考慮すると、コストの差はもっと広がります。
 エピナスチン塩酸塩を始めとした全ての抗アレルギー剤は“注意力低下などの副作用”の他にも、稀にですが“肝機能障害など比較的重症の副作用”が出現する可能性があります。これは処方薬であっても市販薬(OTC)であっても、同じ物質を内服している場合は同等の確率で副作用が出現します。医療機関から処方箋で抗アレルギー剤が処方されている場合は、この副作用を医師の診察や検査によって管理する事が可能です。しかし、薬局から市販薬(OTC)を購入する場合は基本的に健康状態や副作用の管理を行う事ができません。効果が低いからと用法・用量を守らず服用を続けると危険な場合もあると考えて良いと思います。

 漢方薬にも市販薬(OTC)があります。例えば花粉症の代表的な漢方薬である、19番・小青龍湯(ショウセイリュウトウ)は各社から顆粒状のエキス剤もしくは錠剤として発売されています。漢方メーカーのK社は医療用漢方薬の大手メーカーですが、市販薬(OTC)にもたいへん力を入れています。K社の市販薬(OTC)の小青龍湯は一日3回内服のタイプで、1箱24包入り(8日分)で1,980円となっています。

エピナスチン塩酸塩の場合と同様にクリニックで1ヶ月処方を行った場合で比較すると以下となります。

K社小青龍湯24包入り1箱(8日分)×10箱=1,980円×10=19.800円

医療機関(クリニック)で処方を受けた場合

医療機関での費用初診時1,010円×1+再診時 570円×2=2,150円
薬局での費用薬剤管理料+薬28日分=1,670円×3=5,010円
合計7,160円

症状がやや重く、エピナスチン

市販薬(OTC)の場合:
27.720円+19,800円=37,520円
(アレジオン10、84日分・168錠+小青龍湯、80日分・240包)
クリニックで処方を受けた場合:
2,150円+5,520円+5,010円=12,680円
(診察料(初診料+再診料×2)+アレジオン20、84日分+小青龍湯、84日分)

塩酸塩と小青龍湯を併用している方の場合はさらに以下となります。

(3割負担の場合の自己負担分です。1割負担の場合は約4,220円になります。)
※この価格はあくまで最低金額の一例です。曜日や時間帯、診療内容によって料金は変動いたします。

 点眼薬、点鼻薬も同様に市販薬(OTC)で出ているもので医療用成分が配合されているものは、ほとんど医療機関での処方が可能であり、その費用の違いも概ね上記の薬剤と同じ位となっています。
 他に医療機関を受診するメリットの一つとして、アレルギーの検査(血液検査など)を受けられるという点もあります。的確な治療を行うには、まず敵を知る必要があります!血液検査を行いアレルギー症状の原因は一体何なのか!を正確に調べることで、より的確な治療、適切な対処が可能です。もし血液検査を行う場合、医療機関での自己負担額は約3000円~6000円ぐらいです。上記にこれを加えても、薬局で市販薬を買い続けるよりは金額的に低く抑えられます。

 またクリニックや病院などの医療機関では、処方する薬の種類が増えても診察料や薬剤管理料は変わりませんので、薬の種類が増えれば増えるほど市販薬(OTC)に較べて割安になります。
花粉症の治療で医療機関を受診する場合は、抗アレルギー剤や漢方薬、点眼薬、点鼻薬などを幅広く処方可能な医療機関に行くと、通院の手間という面でも費用という面でも有利と言えます。ひどい症状でお悩みの方は、是非一度医療機関を受診することをお勧めいたします。

 最後になりますが、では薬局で薬を買うことは医療機関を受診する事に比べデメリットばかりなのでしょうか?
そうではありません。例えば忙しいビジネスマンの方などは、どうしても医療機関を受診する時間がとれない場合が多々あると思います。そのようなケースでは、ある程度まとまった時間が必要な医療機関受診ではなく、薬局で市販薬を購入することが時間的に大きなメリットになり得ます。そういう点で、薬局で医療機関と同じ成分の薬が買えることは、多くの方々の利益になると私は考えております。

 ですが、医師としてやはり医療機関での適切な花粉症治療・対策を強くお勧めいたします。忙しい方も少し時間を作って是非一度医療機関を受診して下さい。当クリニックでも花粉症の専門治療を行っております。まだ医療機関を受診されていない方は是非ご相談下さい。

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岡宮 裕 院長
1990年 杏林大学医学部 卒業 慶應義塾大学腎臓内分泌代謝内科に入局 横浜市立市民病院・静岡赤十字病院・練馬総合病院他 腎臓病・高血圧・糖尿病・血液内科やアレルギー疾患など内科全般の幅広い医療に従事。 代々木上原の吉田クリニックにおいてプラセンタ注射を使った胎盤療法等の様々な領域について研鑽を重ねる。 2009年 代官山パークサイドクリニック 開業 2011年 海外渡航前医療センター 開設

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