男性更年期障害の漢方治療はとても有効な手段です。先述のホルモン補充療法(ART)の場合はLOH症候群であるか否か、すなわちフリーテストステロン(遊離型テストステロン)の数値によって、同じ症状でも治療方針が180度異なるという側面がありました。そのため、フリーテストステロンが低下していない患者さんが検査結果に失望するという事もしばしば見受けられました。
その点、漢方薬による治療は血液検査の数値に関わらず、自覚症状や東洋医学的診察所見により治療が可能ですので、LOH症候群の患者さんにも、LOH症候群ではない男性更年期障害の患者さんにも治療適応となります。また、漢方薬はホルモン補充療法やその他のほとんどの西洋薬と併用が可能なため、男性更年期障害の治療の選択肢が広がります。

漢方薬は東洋医学的な診断に基づいて処方されます。そのため初めて漢方治療を受ける方には多少戸惑うケースも見受けられます。
西洋医学的な治療に於いては、ひとたび診断が確定すると、ガイドラインというマニュアルにしたがってすべての人に同じ治療が行われます。男性ホルモン補充療法などの治療はまさにその代表例です。
それに対して東洋医学的な治療は、同じ症状・病名でも、個々の患者さんの体質によって治療が異なります。東洋医学では患者さんの体質の事を『証(ショウ)』と言います。『証』は望診、脈診、舌診、腹診などの東洋医学的診察によって診断します。それにより治療効果が期待できそうな漢方薬を処方し、内服して頂きます。また漢方治療で重要なのは、その後の調整です。漢方薬は一回処方すればそれですべて決定という訳ではありません。『医者の薬もさじ加減』ということわざがありますが、ここで言う薬とは漢方薬の事です。ツムラやオースギのエキス剤(顆粒)の漢方薬が出る前は、漢方薬はすべて煎じ薬でした。診察時に前回処方した漢方薬が効いたかどうかを患者さんに尋ね、診察を行い、処方に微調整を加える。これが『さじ加減』です。さじ加減が上手く出来るのが名医、出来ないのが藪医者とされました。エキス剤の漢方薬では、生薬の量を調整する『さじ加減』は出来ませんが、状況に応じて、より効果が期待される漢方薬に変更したり、他の漢方薬と組み合わせる事で、より良い治療とする事が可能です。

漢方薬は即効性が期待できるものも存在しますが、男性更年期障害に対する漢方薬は長く服用する事で真価を発揮するものが多いため、継続的な内服をお勧めしています。

男性更年期障害については、
当クリニック、LOH症候群・男性更年期外来のページよりご覧ください。

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岡宮 裕 院長
1990年 杏林大学医学部 卒業 慶應義塾大学腎臓内分泌代謝内科に入局 横浜市立市民病院・静岡赤十字病院・練馬総合病院他 腎臓病・高血圧・糖尿病・血液内科やアレルギー疾患など内科全般の幅広い医療に従事。 代々木上原の吉田クリニックにおいてプラセンタ注射を使った胎盤療法等の様々な領域について研鑽を重ねる。 2009年 代官山パークサイドクリニック 開業 2011年 海外渡航前医療センター 開設

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