「冷え」に著効する漢方薬の話をします。

ツムラやクラシエなどから顆粒の漢方薬としても出ている38番当帰四逆加呉茱萸生姜湯(トウキシギャクカゴシュユショウキョウトウ)という名前の漢方薬です。この漢方薬の出典は漢時代の「傷寒論」という代表的古典書であり、2000年に渡って処方されてきた薬です。

漢方は自然の草木や鉱物などの成分である「生薬」を組み合わせて出来ています。当帰四逆加呉茱萸生姜湯は下記の9種類の構成生薬から作られています。

・大棗(タイソウ)   :ナツメの成熟した果実
・桂皮(ケイヒ)    :乾燥シナモン
・芍薬(シャクヤク)  :キンポウゲ科の多年草シャクヤクの根
・当帰(トウキ)    :セリ科の多年草トウキの根
・木通(モクツウ)   :アケビなどの茎
・甘草(カンゾウ)   :マメ科の多年草カンゾウの根
・呉茱萸(ゴシュユ)  :ミカン科の植物であるゴシュユの果実の皮
・細辛(サイシン)   :ウスバサイシンなどの根、香辛料としても頻用される
・ 生姜(ショウキョウ) :ショウガの根茎

上記のうち、当帰・桂枝が血行を改善し、芍薬が血行の調整、大棗・甘草が筋肉の緊張をゆるめ、腹痛も和らげます。木通が体の水はけを良くし、細辛・呉茱萸・生姜が体を中から温めます。呉茱萸には胃腸を丈夫にする効果が、生姜には体の中の水のめぐりを良くし、吐き気などを止める作用もあります。

本剤の適応はツムラによると以下となっています。
手足の冷えを感じ、下肢が冷えると下肢または下腹部が痛くなり易いものの次の諸症、しもやけ、頭痛、下腹部痛、腰痛
適応証(体質)は、虚証、寒証

漢方の用語で「四逆」と言いますが、手足の血行が途絶えて(あくまでも漢方の診断上の概念での血行途絶です。本当に血液が流れなくなった訳ではありません)、そのため足先など四肢末端に著名な冷えが出現します。四逆は冬場の外出時の足先の冷えなどから始まり、次第に慢性的な手足の冷えに発展し、頭痛、吐き気、めまい、腰痛、坐骨神経痛なども引き起こします。
さらに体の中心部まで冷えが伝わると腹痛、腹部膨満感、疲労倦怠感、軽度の腹膜炎を生じます。食事の後いつまでもお腹の中に食べたものが残り、歩くと胃の中でチャポチャポ音がしたりします。冷えが続くと水の代謝も悪化するため、足のむくみ尿量の減少をきたします。冷えはひどくなると人によっては梅雨時でもしもやけを生じ、夏場の冷房でもひどい「四逆」症状を呈します。

冷えは不妊症の原因にもなるため、23番の当帰芍薬散と同様に本剤も不妊治療に用いられています。

冷えは蓄積して行き症状が悪化させるため、早めの漢方内服が効果的です。

当、代官山パークサイドクリニックでは、この当帰四逆加呉茱萸生姜湯をはじめとした「冷え」に良く効く漢方の治療を行っています。「冷え」でお悩みの方、漢方の興味がお有りの方など、お気軽にご相談ください。

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岡宮 裕 院長
1990年 杏林大学医学部 卒業 慶應義塾大学腎臓内分泌代謝内科に入局 横浜市立市民病院・静岡赤十字病院・練馬総合病院他 腎臓病・高血圧・糖尿病・血液内科やアレルギー疾患など内科全般の幅広い医療に従事。 代々木上原の吉田クリニックにおいてプラセンタ注射を使った胎盤療法等の様々な領域について研鑽を重ねる。 2009年 代官山パークサイドクリニック 開業 2011年 海外渡航前医療センター 開設

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