地震と不安・不眠の話

東日本大震災(関東東北大震災)以降、不安や不眠を自覚される方が多い様です。私の外来でも震災後一週間が経過した頃から相談を受けるようになりました。
特に不眠に悩まれている方が予想以上に多く、年齢も小中学生からお年寄りまで幅広い事にも驚かされました。
また、不眠にはいくつかのタイプが存在しますが、地震による不眠は中途覚醒型(寝付く事はできても、夜中に何回も目が覚めてしまうタイプ)と熟眠障害型(睡眠時間は足りているはずなのに疲れがとれない、寝た気がしないというタイプ)が多い様に思われます。
私の外来では、通常は入眠障害型(ベッドに入っても寝付けないもの。一度眠りに入れば朝まで寝ていられるというタイプ)の方が大多数を占めるため、睡眠薬を処方するケースも多いのですが、地震による不眠に多い中途覚醒型や熟眠障害型は睡眠薬の処方が難しいケースが多いのが悩みの種です。
前者で処方する睡眠薬は短時間作用型の睡眠薬が使えるため翌日の日中の眠気や能率の低下が少なく、限られた期間であれば比較的安全に処方できます。
後者で処方する睡眠薬は、睡眠中ずっと効果を発揮するものである必要があるため、中~長時間作用型の睡眠薬を使います。
そのため翌日の日中の眠気や能率の低下をきたし易く、耐性や反発性不眠などの副作用にも注意する必要があるなど様々な問題があります。また小中学生などに睡眠薬を処方する事は可能ならば避けたいところです。

そこで当クリニックでは、地震による不眠に対し、漢方薬を第一選択として治療を行っています。
現在のところ『加味帰脾湯(カミキヒトウ)』が最も効果的と思われます。加味帰脾湯はオースギ・ツムラ・クラシエなどから顆粒状の漢方薬として出されており、もちろん保険適応で処方できます。
漢方での不眠治療は睡眠薬での治療と異なり、飲めばすぐ眠くなるというものではありません。飲むことで睡眠と覚醒のリズムを整えてくれる薬です。漢方薬を一日1~3回定期的に服用することによって効果が現れます。
加味帰脾湯は漠然とした大きな不安で眠れないタイプの不眠に、"不安の総量を減らす"という形で効くと、東洋医学的には説明されています。
地震による不眠のうち中途覚醒型の人には、加味帰脾湯の処方を基本として、それでも眠れない時には比較的安全な短時間型の睡眠薬を飲むように処方しています。

熟眠障害型の場合は、『加味帰脾湯』に『酸棗仁湯(サンソウニントウ)』を合包することによってより効き目が強く発揮できるようにした漢方薬を一日2回、朝と寝る前に定期的に飲んでいただき、必要に応じて最低限の安定剤を内服するように処方しています。これらの漢方薬は地震以降不安や不眠を訴えるお子様にも量を調節して処方する事で、安心してお飲みいただけます。

漢方薬は同じ病名でも患者様の症状や証(体質)により最適な薬が異なりますので、実際は診察により処方が決定されます。
地震による不安や不眠は自分でも気付かないうちにだるさや集中力の低下などの原因となっていることもあります。ぜひ、早めの受診をお勧めします。

お気軽に
お問い合わせください

診療時間 午前10時-14時 / 午後16時-19時[水・土休診]
※金曜は21時まで診療

author avatar
岡宮 裕 院長
1990年 杏林大学医学部 卒業 慶應義塾大学腎臓内分泌代謝内科に入局 横浜市立市民病院・静岡赤十字病院・練馬総合病院他 腎臓病・高血圧・糖尿病・血液内科やアレルギー疾患など内科全般の幅広い医療に従事。 代々木上原の吉田クリニックにおいてプラセンタ注射を使った胎盤療法等の様々な領域について研鑽を重ねる。 2009年 代官山パークサイドクリニック 開業 2011年 海外渡航前医療センター 開設

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です