更年期障害と診断されたら ー 治療について
血液検査を行うと約一週間で結果が出て診断がつくところまでは前回お話ししました。今回は診断を受けて治療をどのように行うかについてお話します。
更年期障害は症状が多岐に渡るため、治療も様々な治療法の中から適切なものを選択する必要があります。治療方針を決めるためには、更年期障害の診断・治療の経験を積んだ医師によく相談する必要があります。以下に治療法の概要をまとめます。
① 漢方薬治療
漢方薬治療は、更年期障害の症状に対して最優先で考慮すべき治療だと考えています。
漢方薬による治療の利点は、体の負担が少ないという点にあります。漢方薬は、飲む人の体質(東洋医学では“証(ショウ)”と呼びます)によって服用すべき薬が異なります。医師は脈や舌、お腹などの所見からその人に適した漢方薬を処方します。処方される可能性のある漢方薬は数多くありますが、代表的な漢方薬としては、『当帰芍薬散(トウキシャクヤクサン)』『加味逍遥散(カミショウヨウサン)』『桂枝茯苓丸(ケイシブクリョウガン)』などがあります。ツムラ、オースギ、クラシエ、コタローなどのメーカーが保険適応の漢方薬を出しています。更年期障害の漢方治療のほとんどは保険診療で処方可能です。
② 女性ホルモン補充療法(HRT)
検査結果によって適応がある場合はホルモン補充療法を行う場合があります。血液検査で卵胞ホルモン(エストラジオール:E2)30以下、かつ卵胞刺激ホルモン(FSH)50以上の場合に考慮される治療法で、女性ホルモンを直接補充する事によって更年期症状の改善を図る治療法です。
ホルモン補充療法(HRT)には投与経路の違いから大きく3つに分かれます。
内服薬によるHRT
貼付剤(はり薬)によるHRT
注射薬によるHRT の3つです。
当院ではこのうち主に貼付剤によるHRTを行っています。
内服薬は吐き気などの副作用が生じる事が多いため注意深く投与する必要があります。注射薬はどうしても注射の痛みや頻回の通院がネックになる場合が多いため、貼付剤による治療が自然に増えて行ったのです。貼付剤で皮膚がかぶれるなどの副作用が心配な方には、ゲル状の塗り薬タイプのHRT製剤もあります。
③ 胎盤療法(プラセンタ療法)
胎盤から抽出した成分であるプラセンタを注射、または経口投与する事による治療法です。
胎盤療法は、45歳から55歳の更年期障害の方に限り、条件を満たせばメルスモンというプラセンタ注射を用いた治療が保険適応で可能です。
もうひとつのプラセンタ注射であるラエンネックもメルスモン同様に更年期障害に効果が有りますが、こちらは保険適応にはなりません。
プラセンタ注射の利点は、冷えに有効である事と、更年期時期の肌のトラブルに非常に効果が高い事です。更年期症状の改善と“美肌効果”の両方を目指す方には最適な治療法です。プラセンタの飲み薬は保険適応にはなりません。
④ SSRI(内服薬)
女性の更年期障害にはしばしば“うつ”を合併します。
SDSスコアなどのチェックシートでうつ病と診断されたケースではSSRIの内服は有用であるのはもちろんですが、最近の研究ではうつ病と診断されていないケースでも更年期障害にSSRIが有効との結果が出ています。精神症状だけではなく、ホットフラッシュや発汗などの症状にも有効との事です。
⑤ 男性ホルモン注射
更年期障害の女性の中で“とにかく元気がない”という人には男性ホルモン(テストステロン)の補充を行う場合もあります。
もちろん男性更年期障害(LOH症候群)の場合の男性ホルモン補充療法(ARTもしくはTRT)に較べると少ない量の補充です。注射剤にはなりますが、女性ホルモンに少量の男性ホルモンを加えたボセルモンデポーというホルモン注射があります。これは効果がある人には絶大な効果がありますので、上記の4つの治療の組み合わせでも良くならないケースでは考慮すべき治療法と考えます。
以上の治療法は、単独でも複数の治療の組み合わせでも用いる事ができます。医師に相談の上、自分に適した治療を探すと良いでしょう。
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